藤本タツキ短編集『17-21』『22-26』全8作ガイド。鬼才の原点を読み解く

藤本タツキ 短編集 短編集

「藤本タツキの原点」を読みたい人へ

『チェンソーマン』『ルックバック』『さよなら絵梨』── 藤本タツキは長編でも読み切りでも結果を残してきた作家です。

そんな藤本タツキの「ここまで来る前」に描かれた短編たちを、まとめて読める本があります。それが集英社の 『藤本タツキ短編集 17-21』『藤本タツキ短編集 22-26』。タイトルの数字は、藤本タツキ本人の年齢です。

  • 『17-21』: 17歳〜21歳の頃に描かれた4作品
  • 『22-26』: 22歳〜26歳の頃に描かれた4作品

両方とも2021年に発売されました(『17-21』が10月、『22-26』が11月)。連続発売だったこともあり、ファンの間ではセットで語られることが多い2冊です。

この記事では、計8作品を 収録順に、あらすじと読みどころを軽くまとめてご紹介します。「藤本タツキにハマったので原点を遡りたい」という方の入口になれば。

『藤本タツキ短編集 17-21』── すべての始まり

『17-21』は、藤本タツキの 漫画賞初投稿作 から始まる4本。デビュー前後の手探りと、すでに片鱗を見せている「藤本らしさ」が同居する、ファン必読の1冊です。

1. 庭には二羽ニワトリがいた。

藤本タツキの 漫画賞初投稿作。彼が漫画家としてスタートしたまさにその1本です。

舞台は、宇宙人との戦争に敗れて滅びたとされる地球。宇宙人の学生・陽平が、学校で2羽のニワトリの世話をしている。ただし、そのニワトリの正体は「着ぐるみを着た人間」── という、いきなり藤本タツキらしい設定が炸裂します。

藤本作品の「人間と非人間の境界」というモチーフの源流が、すでにここに見える1本です。

2. 佐々木くんが銃弾止めた

公式の紹介文は「思春期の熱情が暴走する」。

春期講習で講師の川口先生に会うため通う高校生・佐々木。そこに、川口先生に振られた男が銃を持って教室に乱入してくる ── というハードな導入から物語が転がっていきます。

「ふつうの青春」と「狂気の暴力」が地続きで描かれる構造は、後の『チェンソーマン』にも通じる、藤本タツキの代名詞的な作風です。

3. 恋は盲目

公式の紹介文は「迸る恋心が全てを蹴散らすSFラブコメ」。

高校卒業前日、生徒会長の伊吹がずっと好きだったユリと一緒に下校する。彼が長年の想いを告げようとするたびに、あらゆる「障害」が立ちはだかる ── という、ジャンルとしてはSFラブコメに分類される1本です。

「ラブコメ」と銘打ちながら、藤本タツキ特有の不穏さと突拍子のなさがしっかり同居している、不思議な味わいの作品です。

4. シカク

公式の紹介文は「ネジがぶっ飛んだ殺し屋少女の恋」。

殺し屋として恐れられている少女・シカクのもとに、3500年の不老不死に飽きた吸血鬼ユゲルが現れ、「自分を殺してほしい」と依頼してくる ── という、これも一目で藤本タツキらしい始まり方。

「死にたい者」と「死を与える者」が出会うとき、何が起こるのか。初期短編の中でも特にファンの評価が高い1本です。

『藤本タツキ短編集 22-26』── ファイアパンチ前後の地層

『22-26』は、藤本タツキが22歳〜26歳のころ、つまり 『ファイアパンチ』連載期間(2016〜2018年)を含む時期 に描かれた4本を収録しています。商業作家として軌道に乗っていく時期の、4つの実験です。

5. 人魚ラプソディ

公式の紹介文は「海中のピアノが繋ぐ少年と人魚の恋」。

海中のピアノを通じて出会う、少年と人魚。詩情とせつなさを核にした1本で、ホラーや暴力描写が前面に出る藤本作品のなかでは異色とも言える優しい読み味です。

「藤本タツキにも、こういう面があるんだ」と気付かせてくれる作品です。

6. 目が覚めたら女の子になっていた病

公式の紹介文は「芽生えたのは女心か恋心か!?」。

タイトル通り、ある朝目覚めたら女の子になっていた ── という設定から始まる青春コメディです。藤本タツキの「性別を入れ替えて見えてくるもの」への関心は、後の作品でも形を変えて何度か登場するモチーフ。その源流のひとつと読めます。

7. 予言のナユタ

公式の紹介文は「残酷な運命を背負った妹と兄の物語」。

「ナユタ」という名前は、後に『チェンソーマン』第一部の最終話で再び登場することになります。同名のキャラを偶然なのか意図的なのか藤本タツキが2度使った点は、ファンの間で考察対象になり続けている話題です。

兄妹の関係、残酷な運命、宿命の引き受け方 ── 後の藤本作品に通じるテーマが、まっすぐに描かれています。

8. 妹の姉

公式の紹介文は「絵に懸ける姉妹の愛憎と才能が交錯する」。

絵を描く姉妹のあいだに芽生える、愛と憎しみ、才能をめぐる確執を描いた1本。

これは後に『ルックバック』にもつながっていく、藤本タツキの大事な主題のひとつです。「描き手としての自己と他者」「才能というものの残酷さ」── これらに最初に挑んだ作品のひとつとして、特に重要な位置にあります。

どう読むか ── おすすめの読み方

8作をどう読めばいいか、迷ったらこの2パターンがおすすめです。

  • 収録順に読む: 各短編集とも、最初の作品から順に読むことで藤本タツキの呼吸を掴みやすい構成になっています
  • 長編の前後で読む: 『17-21』を読んでから『ファイアパンチ』へ、『22-26』を読んでから『チェンソーマン』へ、と挟み込むと、長編とのモチーフのつながりがくっきり見えてきます

まとめ

藤本タツキ短編集『17-21』『22-26』は、彼の作家としての地層を一気に掘れる、ファン必読の2冊です。

  • 『17-21』は デビュー前後の4本。すでに「藤本らしさ」がある
  • 『22-26』は 『ファイアパンチ』前後の4本。後の長編につながるモチーフが揃っている
  • 計8作、1冊あたり1〜2時間で読めるサイズ感

『チェンソーマン』『ルックバック』『さよなら絵梨』にハマったあなたが、藤本タツキの作家性をもう一段深く掘りたくなったとき、ここに帰ってきてください。

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出典・参考

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