「藤本タツキの作品はもう映画」と感じる理由
『チェンソーマン』を読んでいて、「あ、これ映画でしょ」と思わず口に出した経験、ありませんか?
藤本タツキの作品にはいつも、漫画というメディアの中に映画が織り込まれています。コマ運び、引きと寄り、視点の切り替え。そして何より、ホラー・サスペンス・コメディと多彩なジャンルから映画への愛が滲み出てくるんですよね。
これはたまたまではなく、藤本タツキ本人が筋金入りの映画好きとして知られています。
- 『チェンソーマン』単行本のコメント欄では、毎巻お気に入りの映画タイトルを叫び続けた
- ジャンプ巻末コメントや SNS(ながやまこはる名義)で頻繁に映画を語る
- 集英社・音楽ナタリーなどのインタビュー・対談でも、映画話が止まらない
この記事では、藤本タツキ本人が公の場で「好き」「影響を受けた」と語った映画から、特に作品に色濃く反映されていそうな10本を、出典つきでまとめました。
ホラー映画 ── 藤本タツキの背骨
藤本作品の暴力描写・恐怖演出の源流は、明らかにホラー映画にあります。本人もホラーへの偏愛を繰り返し公言しています。
1. 悪魔のいけにえ(1974年/トビー・フーパー)
藤本タツキの代表作タイトル『チェンソーマン』── そのチェンソーが恐怖の象徴として刻まれたのが、トビー・フーパー監督の『悪魔のいけにえ』です。
『チェンソーマン』単行本2巻の作者コメントで、藤本タツキは「悪魔のいけにえ大好き!」と直球で愛を叫んでいます。チェンソーという凶器そのものへの偏愛が、藤本作品のスタートラインに刻まれているんです。
2. ヘレディタリー/継承(2018年/アリ・アスター)
家族の崩壊と継承された呪いを描いた、アリ・アスター監督の長編デビュー作。
『チェンソーマン』単行本3巻の作者コメント「ヘレディタリー大好き!」で言及されています。藤本作品が繰り返し描く「家族の喪失」「血のつながりの呪い」というモチーフは、まさに『ヘレディタリー』が突き詰めたテーマでもあります。
3. ミッドサマー(2019年/アリ・アスター)
明るい昼の光の中でじわじわと壊れていく狂気を描いた、アリ・アスター監督の2作目。
藤本タツキは、ジャンプ連載期間中の巻末コメントで本作にも触れています。「明るい場所で起こる地獄」という構造は、藤本作品が見せる「日常に紛れ込む悪魔」のトーンと通じるところがあります。
4. ゲット・アウト(2017年/ジョーダン・ピール)
人種差別というテーマを心理ホラーに昇華した、ジョーダン・ピール監督のデビュー作。
『チェンソーマン』単行本9巻の作者コメント「ゲット・アウト大好き!」で言及されています。「ふつうの招待」が「逃げ場のない悪夢」に転じる構造は、藤本作品の急展開とも響き合います。
5. ジェイコブス・ラダー(1990年/エイドリアン・ライン)
戦地から戻った男が、現実と幻覚の境界で揺れ動くサイケホラーの古典。
『チェンソーマン』単行本10巻の作者コメント「ジェイコブス・ラダー大好き!」で言及されています。「自分が見ているものが現実なのか虚構なのか」という不安は、『さよなら絵梨』のメタフィクション構造と地続きで読める要素です。
タランティーノとハリウッド ── 演出・メタ性の源泉
クエンティン・タランティーノは、藤本タツキの「映画的演出」を語るうえで欠かせない名前です。
6. デス・プルーフ in グラインドハウス(2007年/クエンティン・タランティーノ)
長尺の会話劇と暴力描写を両立させた、タランティーノの実験作。
『チェンソーマン』単行本5巻の作者コメント「デス・プルーフ in グラインドハウス大好き!」で言及されています。藤本タツキ自身、『ファイアパンチ』第1話のタイトル挿入演出について「タランティーノの映画とかで、タイトルがバンッ!って出てくるのが好き」とインタビューで語っており、藤本作品の「画作り」にはタランティーノ映画への意識が刻まれています。
7. ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019年/クエンティン・タランティーノ)
「もしも歴史が違っていたら」をハリウッドへの愛と共に描いた、タランティーノ晩期の傑作。
藤本タツキは、ジャンプ巻末コメントなど複数の場面で本作に触れています。『ルックバック』にも本作を匂わせる演出があると指摘されることが多く、「映画と漫画」「現実と虚構」を交差させる藤本作品のスタイルと強く共鳴している1本です。
ストップモーションとアニメ ── 童話的恐怖と原体験
ホラーやハリウッドだけでなく、アニメーション映画への愛も藤本タツキの大事な軸です。
8. コララインとボタンの魔女(2009年/ヘンリー・セリック)
「もうひとつの家族」が用意した、優しさに包まれた地獄 ── ストップモーションで描かれたダークファンタジーの傑作。
『チェンソーマン』単行本6巻の作者コメント「コララインとボタンの魔女大好き!」で言及されています。「もう一人の自分」「並行世界の家族」という構造は、藤本作品の「家族の喪失と再構築」のテーマと響き合います。
9. 千と千尋の神隠し(2001年/宮﨑駿)
藤本タツキにとって「映画館で最初に観たジブリ作品」。集英社オンラインの1万字インタビューで、「客席がぜんぶ埋まっていて、立って観たのを覚えてます」と原体験を語っています。
「今でも一番観返しているジブリ作品」とまで言い切る偏愛ぶり。藤本作品が時折見せる「異界へ迷い込む」演出には、千と千尋の影響を感じる場面が少なくありません。
韓国映画 ── 物語の組み立てを学ぶ
藤本タツキは、複数のインタビューで韓国映画への憧れを口にしています。
10. チェイサー(2008年/ナ・ホンジン)
「ふつうのサスペンスなら終盤に来るような展開」を物語の前半でぶっこんでくる、ナ・ホンジン監督のデビュー作。
藤本タツキは漫画家・沙村広明との対談で「ずっと韓国映画みたいな漫画を描きたいと思っていて」と切り出し、その代表例として本作を挙げています。「主人公が悪役を追う映画」「開始30分くらいでもう悪役が主人公に捕まる」── 普通なら終盤に来る展開を早めに置く構成への偏愛を語っているんです。『チェンソーマン』の急転直下な物語運びは、まさに「韓国映画的」と評されることが多い特徴です。
まとめ ── 藤本タツキを「映画から逆算」して読む
藤本タツキに影響を与えた映画10選を、ジャンル別に整理するとこうなります。
- ホラーの背骨: 『悪魔のいけにえ』『ヘレディタリー』『ミッドサマー』『ゲット・アウト』『ジェイコブス・ラダー』
- タランティーノとハリウッド: 『デス・プルーフ in グラインドハウス』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
- 童話的恐怖と原体験: 『コララインとボタンの魔女』『千と千尋の神隠し』
- 韓国映画の構造: 『チェイサー』
藤本作品を読むとき、これらの映画を1〜2本でも観ておくと、コマの裏側で何が引用されているのかが見えてきます。
「藤本タツキは映画を読んで漫画にしている作家」── これが、彼の作品を読み解く一番シンプルで本質的な補助線です。
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出典・参考
- 藤本タツキ『チェンソーマン』単行本2〜10巻 作者コメント, 集英社
- 藤本タツキ ジャンプ本誌 巻末コメント
- 「藤本タツキ1万字インタビュー」集英社オンライン
- 「『チェンソーマン』藤本タツキ先生が影響受けた、オススメしている作品【映画編】」社会の独房から
- 「藤本タツキ先生がオススメした・影響を受けた作品まとめ」ほんのび(note)


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